使用する電力のすべてを太陽の力でまかなう
武道館ライブ「The Solar Budokan」。
幸運なことに、とあるプレゼント企画でチケットが当たり、
12月20日の夜、日本武道館に初めて行ってきました。
太陽の力だけで武道館ライブを実現したい。
前例を作って、未来への希望を与えたい。
発起人である佐藤タイジさんの太陽に負けないくらい熱い想いに
共感したアーティスト20組近くがライブに参加。
幅広い年齢層の観客が約4時間のステージを楽しみました。
前例のないイベントの実現はやはり多難だったよう。
3月11日の大震災から約3ヶ月後の2011年6月9日、
まだ日本中が暗くてどこにも希望が持てないような頃、
タイジさんは、「ライブフォーニッポン」というイベントで
「100%ソーラー武道館」を2012年12月に実現すると宣言。
しかし、当時はネットワークもノウハウもなく、あるのは熱い想いだけ。
なにもかも手探りのなかで、なかなか協力を得られない状況が続いたそうです。
ライブの終盤で登場した仲井戸“CHABO”麗市さんは
「みんな、ちゃっちゃか進んでいくからよぅ、ちょっとひとこと、言わしてくれぃ」
と言って、ソーラー武道館に込めたタイジさんのセリフをメモしてきた紙を読み上げ、
ここまでこぎつけた苦労を労いました。
「“太陽の力だけでできるんだという前例が未来の地球には必要なのだ。
日本人の技術力と心意気を結集させる時なのだ。
『クリーンで安全なエネルギーへの移行』は現代人に課せられた一大宿命なのだ。
未来を我々の手で作っていこう”
技術力はないけどよ、心意気ならあるからさ、
タイジの想いが多くの人に伝わるように歌わしてくれ」
「心意気」でライブを盛り上げたアーティストたちを、
「技術力」で支えたのは、新興の蓄電池メーカー、
金沢工業大学の先生と学生、そして長野県飯田市の市民発電所でした。
メーカーが借してくれたさまざまな蓄電池を組み合わせ、約400kWを確保。
公式サポーターを務める金沢工業大学の学生が充電に協力し、
楽器やステージ機材、スクリーンなどに電力を供給しました。
功労者として学生2人がステージに登場する場面も。
照明とバックアップ電源には、
金沢工業大学の鈴木康允教授のアドバイスを得て、
バイオディーゼルを利用。
植物も太陽光で育つので、バイオディーゼルも太陽光発電と言えるのだそうです。
そして、これらだけではまかないきれなかった2000kWは
長野県飯田市の市民ファンドによる発電所、
南信州おひさま発電所からグリーン電力証書を購入。
フロントスピーカーや空調などにあてられました。
南信州おひさま発電所は、メガソーラーなどとは異なり、
市民が出資して市内の住宅や公共施設にソーラーパネルを設置する
市民参加型の発電システムです。
タイジさんが飯田市を訪れた様子もオープニング映像で紹介され、
発電する市民と、電力を使う人の想いがつながったのを見て、心が温まりました。
何度も実験的なライブイベントを重ねながら、
実現に至ったThe Solar Budokan。
一人の想いに共感したさまざまな人々がそれぞれの力を出し合い、
不可能という幻想を一つ打ち砕きました。
会場で鳴り響く拍手の音。
一人がたたく手の音は小さくて遠くまでは聞こえないけれど、
共鳴した人が一人、また一人と手をたたき、
会場全体に広がっていく。そして大きな音になる。
一人でできることは小さいかもしれない。
でも大きなことも一人から始まっているんだなぁ。
大切なことを教えてくれたライブでした。
The Solar Budokanウェブサイト:http://solarbudokan.com/top.html
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